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交通事故によって16歳の若さで亡くなった
小林秀輔を偲んで

~ 病院にて ~

病院には、母親も、秀輔の姉も、祖父母もすでに秀輔の容態を案じながら待っていました。
その時はまだ、手や足の骨を折った位で済めばいいな・・・と楽観的に考えていました。
いつまで経っても医師からの説明はなく、ひょっとすると大怪我をしているのではないかと思い始めた時でした。
医師が出てきて、何度も蘇生を試みましたが、「残念ながらだめです」と突然言われました。
予期せぬ言葉で、最初は何のことかわからず呆然とし、事態が分かるにつれ大きな悲しみが襲ってきて、母親や家族共にその場で泣き崩れていました。
するとその時また別の医師が来て、心臓が動き始め、これからICUに移動しますと告げました。
その時の嬉しかった事、真っ暗闇の中から、一筋の光明が差し、ひょっとすると大丈夫かもしれないと思い、家族でICUに急いで向いました。
向う途中で息子のストレッチャーに出会いました。
何とか命だけは助かって欲しい、ただひたすら息子に「頑張れ、死ぬな」と呼びかけました。
それから一晩中、私を初めとして母親、姉、親族と10数人がICUに入れ替わり立ち代り入り、医師や看護師の献身的な看護を見守りながら、息子にみんなで「頑張れ、頑張れ、負けるな、負けるな」と大きな声で呼びかけていました。
息子につけてある血圧計や呼吸計の数字が下がるたびに、医師が点滴をしたり、脈を診たり、数字のちょっとした動きに一喜一憂し、1つの大切な命をみんなで助けようと全力で、息子の応援をしました。血圧が下がり、脈拍が下がり、呼吸が弱くなると医師が心臓マッサージをしてくれました。
脈が戻るまで1時間でも2時間でも、交替をしながらマッサージを続けてくれました。家族みんなで、「秀輔頑張れ、死ぬな、お父さん、お母さん、姉ちゃんをおいていかないでくれ、家族はいつも一緒だよ」と泣き叫びながら、応援しました。そんな事を一晩中3度も4度も繰り返しているうちに、息子がだんだん弱っていく様子がはっきりと分かりました。
こんな事では絶対へこたれないと、きっと助かる、寝たきりでも、意識が戻らなくても、生きていて欲しい、呼吸をしていて欲しい、ただひたすら祈っていました。
秀輔の白い顔も「お父さん、お母さん頑張るよ」と意識は無いけど、訴えるような顔をしてくれていました。
心臓マッサージを繰り返すにつれ、息子の口から鼻から血が出てくるようになりました。
心臓の脈拍や血圧がだんだん下がってくるのがわかりました。
医師が胸を押すたびに血が少しずつ多く出て来るようになりました。
それを私と母親が交互にふき取りながら、「頑張れ。頑張れ、こんな事で秀輔死ぬな」と叫んでいました。
手にしたガーゼは見る見るうちに真っ赤になっていきました。
最後は胸を押すたびに大量の血が口から鼻から噴出し、誰が見ても肺が破れ、血が噴出してきているのが分かりました。
それとともに、もう息子は助からないと思う気持ちが、胸いっぱいになり、悲しくて辛くて、声もかすれ、医師にはもう残念ながらだめですと何度も言われましたが、ひょっとするともう一回胸を押せば、助かるかもしれない、心臓が動き続けてくれるかもしれないとお願いし、心臓マッサージを続けてもらいました。
母親と、出来れば、秀輔と変わってあげたい、息子が助かるならこの身がどうなってもいい、神様「秀輔を助けてください」とひたすら祈り続けました。
口から鼻から出る大量の血が止まらず、母親から「もう十分秀輔は頑張ったよ、これ以上続けたら秀輔がかわいそう」という一言で、私も医師にお礼を言い、心臓マッサージをやめてもらいました。
血圧計、脈拍計の数字が見る見るうちに0に近づき、0になってからは二度と数字が動く事がなくなってしまいました。時間は午前11時28分でした。
事故からほぼ20時間が経った時でした。


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